* 腐女子向け発言満載 *
妄想咲き乱れる徒然日記。
……ときどきBL小説。
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泡沫
Story of Safari
伊吹片思いパロ。男娼設定ですが工口無し。いろんな意味でふんわり仕上げ。







--- prologue 〜 side 伊吹 〜 ---





仕事の内容はわかりました。条件もそれでいいです。店長さんにお任せします。そうしろって言われたし。
俺にできるかわからないけど、頑張ります。お金、稼がなきゃなんないし。
けいい? あ、ここで働くことになった流れ……えっと、どこから話したらいいんだろう。

友達に頼まれて、借金の連帯保証人っていうのになったんです。
ものすごく頼まれて、それで俺、かわいそうになって、出来ることはしてあげたいって。
金額はね、えっと、五百万だったと思う。俺がサインした紙にはそう書いてあったから。

それで、暫くしたら友達と連絡つかなくなって、そしたら借金取りの人たちが、家とかバイト先とかにも来るようになって、すごい怖いの。声でかいし、突き飛ばされたりするし、お給料みんな持ってっちゃうし。
大家さん優しい人なんだけど、三カ月もお家賃滞納しちゃったら、やっぱり困るって言われて、そりゃそうだよね。それでも借金取りの人たちは毎日のように押しかけて来るし。

そんなときにね、新しい借金取りの人が来たの。おまえの担当は今日から俺だから、って。
俺と歳が近そうな若い男の人で、聞いたら俺より二つ年下だったの。
綺麗な顔しててね、ハーフ? って聞いたら、知らねえ、って。捨て子だったんだって。
俺も親死んじゃって居ないよ、とか話してて、あ、そうそう、それが蛍くん。

その、店長も知ってる借金取りの蛍くん、今までの借金取りの人よりは優しかったけど、やっぱり怖くて、暴力的なんだよね。でも後でジュースとか缶コーヒーとか置いてってくれんの。
「俺が言うのもなんだけど、踏ん張れよ」って。「死んだら殺すぞ」って。よくわかんないよね。
あ、ごめんなさい、俺話すぐ逸れちゃうんです。

えっと、で、その蛍くんから、「最後通告に来た」って言われて。それがこないだの話。
内臓売るのと、体売るのと、人生売るのと、どれか選べって。
俺わかんなくて、でも内臓は絶対嫌で、だって怖いでしょ、なんか。まあ、どれも怖いんだけど。
それで、俺どうしたらいいのって蛍くんに聞いたら、ここに連れて来られたの。
体を売るって、こういうことなんだね。男娼って初めて知りました、俺。




--- 1 ---



平日の昼下がり。栗色をしたマンションの外階段を、伊吹はだらだらと降りていた。
エレベーターはあるが、仕事のとき以外使用してはいけないことになっている。
客と鉢合わせたりするから、らしい。

駅から続く繁華街を、十分ほど行き過ぎた所に、そのマンションはあった。築八年の五階建てで、各階に三部屋ずつあり、それらは全てワンルームだ。間取りも殆ど同じで、しかし角部屋だけは畳一畳分だけ広い。

一階には、高級メンズクラブ(女性向け風俗店。当然看板等は出ていない)『Aquarius』の事務所と、客用待合室がある。二階と三階は男娼たちの待機部屋、四階と五階はプレイルームになっており、客はこのプレイルームかホテルかを、選ぶことができる。

伊吹は一階に着くと、一番奥にあるドアをノックして開けた。玄関に入ると、狭い部屋の全貌が露わになる。土足のまま、中へと進む。

部屋は事務所になっており、一見して居住空間でないことがわかる。
壁に面して並べられた長机には、ノートパソコンが二つと、それに向き合う黒スーツ姿の男が二人。(伊吹が部屋に上がると、揃ってにこやかに挨拶を交わした)壁には、大きなホワイトボードが掛けられている。ボードには、現在接客中の男娼(ここではキャストと呼んでいる)の名前と、ホテル名等が書かれており、マグネット付きタイマーが貼り付いていた。
このタイマーは、キャストから連絡(客と部屋に到着した)が入ると同時に、スタッフがコース終了15分前にセットする。15分前なのは、サービス後のシャワーや着替えをする時間確保のためだ。
つまり、60分コースだと、実質のサービスタイムは45分ということになる。タイマーが鳴ればサービス終了の合図で、スタッフがキャストに電話を入れる。

「ねえ由紀也」

伊吹は事務所の最奥まで進むと、片袖机に頬杖を付いて本を読んでいる男の前に立った。

「店長って呼べっつってんだろ」
「スラダン九巻どこにも無くて続き読めないよ」
「だったら読むな」
「由紀也」
「店長」
「由紀也店長」
「店長」
「……店長なに読んでんの」

椅子に座ったまま、こちらを見ようともしない由紀也の手元を覗き込む。
いくつもの文字の羅列に、伊吹は瞬間的に眩暈を覚える。

「ね、それなに」
「イズムの功過」
「なにそれ」
「漱石くらい読め馬鹿」
「読まないよ馬鹿」

もういい昼寝する、と踵を返した伊吹は、けれどすぐに振り返り、由紀也の傍に戻る。

「なんだよ。事務所あんまウロつくな。待機場戻れ」
「由紀也、嘘ついただろ」
「店長。おまえもしかして態とか」
「待機する所、個室と大部屋あって、ひとりが良かったら個室があるって」

大部屋とは、三階にある角部屋のことだが、他の部屋より畳一畳分広いだけだ。

「あるだろうが」
「大部屋は何人かで過ごせるって。でも大部屋俺しかいないじゃん」
「そりゃ、ひとりで過ごしたい奴らばっかだからだろ」

出勤キャストほぼ個室使ってるし、と事も無げにページを捲る。

「俺、ワイワイ楽しくできると思ってたのに。仕事から戻ると孤独なんだよ」
「漫画でも読んでろよ」
「スラダンの九巻がどこにも無いの」
「……わかった。買ってこさせるから戻って待ってろ」
「うん。ありがと、由紀也」

にっこりと微笑んで歩き去る伊吹の後ろ姿を見つめて、由紀也はつい、おい、と声を掛けてしまった。
振り返る伊吹に、面倒くさそうな表情を浮かべる。

「明日はうちのエースが出勤するから。あの人は大部屋使うと思う」
「エース?」
「稼ぎ頭。週二回しか出ない上、暫く休み取ってたから、おまえ見たことないだろ」
「なんて名前の人?」
「かなで」
「それ本名?」
「なわけないだろ」
「由紀也がつけたの」
「まあ」
「かなで、って綺麗な名前だね」
「顔も綺麗だよ」
「由紀也より?」
「なんでそこで俺が出てくんだよ」
「だって由紀也も綺麗な顔してるから」
「してねえよ馬鹿さっさと戻れ」
「はーい店長」

楽しげに駆けてゆく伊吹を、由紀也は、やっぱり態とか、と恨めしそうに睨んだ。






泡沫△→




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「かなで」くんが誰かは言わずもがな。安易です。

男娼ものを書くなら艶っぽいお話がいい、と常々思っておりました。(いつか必ず)
いぶくん主人公にした時点で叶わぬ夢と散りました。最後までそういうシーンは無いです。
(↑先に言っておくのがいっそ礼儀のように思っている)
小分けにして上げようと思っているので、6ターンくらいになりそう。です。

あと、由紀也が読んでる「イズムの功過」個人的に素晴らし過ぎて何回も読んでます(はあ)



 
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