* 腐女子向け発言満載 *
妄想咲き乱れる徒然日記。
……ときどきBL小説。
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泡沫
Story of Safari
伊吹片思い男娼パロ。






「光くん、今日はものすごく機嫌良いのね」
「……えっ、あ、そう?」

薔薇の香りを纏った女性に髪を撫でられて、伊吹は顔を上げた。
光(ひかる)というのは、所謂源氏名で、由紀也が付けてくれた。由来は「てきとう」らしい。
まるで慣れないその名前に、いつも伊吹はワンテンポ遅れて反応してしまう。

「いつもにこにこしてくれてるけど、今日は特に嬉しそう」

何かあった? と問われ、彼女のブラウスのボタンを閉めながら、うん、と頷く。
事後、服を着せてやるのは、彼女の希望だった。当然、事の前に脱がせてやるのも。

「今日はね、うちのエースに会えるの。待機中に話しするの楽しみなんだ」
「エース?」
「うちで一番稼いでる美人さんなんだって」
「それって、かなで?」
「ゆうこさん、知ってるの?」

ボタンを留め終えて、伊吹は立ち上がり、ベッドに座っている女の横に腰掛ける。

「一回だけお相手したことあるのよ。ものすごく綺麗な顔の子」
「そうなんだ〜」
「半年先まで予約で埋まってるって聞くけど」
「えっ」

そんな人気なんだ、と驚きと尊敬に思わず息を漏らした。
どんな人だろうかと、伊吹の中で期待が膨らむ。

「綺麗な顔だけど、光くんとは合わないと思うな」
「え、どうして」
「う〜ん、なんていうか、世界が違う感じ」
「世界が違う?」
「紳士的だし、笑顔もよく見せてくれるけど」

言いながら立ち上がり、テーブルの上にあるグラスを手にする。グラスの中で、スパークリングワインが細やかな泡を並べている。薄い金色のそれを喉に流し込み、長い髪を掻き上げて、女は伊吹を見下ろした。

「断固たる一線を引いていて、決して心が寄り添わない。そうさせない」

そんな感じかな、と笑う。
伊吹は頭の中で女の言葉を反芻し、心が寄り添わない、と呟いてみた。






「初めまして。『かなで』です。よろしくね」
「あ、かなで、くん」

大部屋に戻ると、マグカップを手にした青年が立っていて、伊吹に気付くと近寄り、嫣然と微笑んで自己紹介をした。かなで、と名乗った青年は、どちらかといえば女顔の、美しい顔立ちだった。噂通りのルックスに、柔らかで少し鼻にかかったような甘い声色をしていて、伊吹の心は軽々と掬い上げられた。

「あ、俺は伊吹。伊豆の伊に、吹奏楽の吹で」
「伊吹くん。良い名前だね。由紀也、俺のときは適当ぽかったのに」
「あ、違う、伊吹は本名。ここでの名前は光だった」

そうなんだ、と、かなでは目を丸くしてから、ふふ、と笑った。
まるで小鳥の囀りのようだと伊吹には感じられた。
もう、かなでが何をしてもかわいく思えるのだろう、と伊吹はどこかで自覚する。

「本名教えてくれるって珍しいね」
「そうなの? かなでくんは?」
「え?」
「本名、なんて言うの」
「ああ、俺は、あんま変わんないから」

にっこり微笑むかなでのポケットが、ぶるぶると震えた。
携帯電話を取り出して、「はい」と返事をする。

「わかった。すぐ行きます」
「仕事?」
「うん、もう少し話したかったね。あ、これ」

淹れたけど飲めないから、良かったら冷めない内に飲んで、とマグカップを渡される。カップからは、香ばしいコーヒーの湯気が、柔らかに揺らめいていた。

「かなでくん、今日何時まで?」
「わかんない、けど、ここにはもう戻らないと思う」
「じゃあ、次いつ出勤?」
「金曜日」
「またそんときいっぱい話そうね」
「そうだね」
「あんまり無理しないでね。いってらっしゃい」
「ありがとう。行ってきます」

そうしてかなでが出て行った後には、爽やかに甘い、清潔な香りだけが残っていた。



* * *



かなでは伊吹の想像を超えて多忙だった。待機部屋にいる時間は日に30分も無く、常に客が待っていた。
由紀也曰く、かなでには太客(ふときゃく。太っ腹な客のことで、多額の金を使う)が多い。それはつまり、長時間コースばかりである為、一日に付く客数はそれほどでも無いが、拘束時間が長いことを意味する。
中には、丸一日独占することを希望する客や、一泊旅行を望む客も居た。

そんな中でも、伊吹とかなでは会う度いろいろな話をした。他愛ない話が殆どだったが、少しずつ仲を深めていった。少なくとも、伊吹はそう思っていた。

話をする中で、かなでについていくつか分かったことがある。
かなでには恋人がいる。その恋人は、「ろくでもない奴」である。
この仕事をしているのも、恋人のためである。理由は語ってくれない。というより、自分のことをあまり語りたがらない。恋人の話も、伊吹がしつこくしつこく聞いて引き出した情報だった。
恋人がいると聞いたとき、伊吹は心の底で、残念な気持ちになった。


その日、伊吹がホテルでひとつめの仕事を終え、待機室へと戻っていたときのことだった。外階段を上がっていると、上から誰かの話し声が聞こえてきた。無意識に足音を忍ばせ近づくと、声は次第にはっきりと聞き取れるようになった。それは、かなでの声で、彼は踊り場で電話をしているようだった。
伊吹は思わず足を止め、息を殺して聞き耳を立てた。

「なんで会って話せないんだよ」

泣きそうにも、怒りに震えていそうにも聞こえる、寂しい声色だった。
相手はたぶん、「ろくでもない恋人」だろうと、伊吹は直感でそう思う。

「都合なんて知るかよ、電話で話すことじゃないだろ」
「なにそれ、意味わかんねえ。俺が悪いの?」
「ねえ、待ってじゃあ俺どうすればいいんだよ」
「……会いたいって思うのが、そんなに悪いのかよ」

いつもとはまるで違う空気を纏ったかなでの声に、伊吹は知らずと泣きそうになる。
いつか聞いたとおり、かなでは優しい笑顔と柔らかな声で、伊吹との間に、「断固たる一線」を引いていたのだと、思い知らされた。
かなでの少し乱暴な物言いも、弱々しく甘い声も、伊吹は一度だって聞いたことはなかった。

「だったら俺のことなんか捨てればいいだろ」

声を荒げるかなでに、心臓が跳ね、伊吹は顔を上げた。
しかしすぐに、「違う」とかなでが続けた。

「違う、そうじゃなくて、待って大和」

直後に数秒の静寂と、切るなよ馬鹿、という呟き。続け様に携帯電話の振動音が響いた。

「はい……すぐ行きます」

ドアの開閉音と、遠くなる足音。伊吹はどさりと座り込む。
コンクリートの階段は尻に冷たく、頬を撫でる風からは、雨の匂いが混じっていた。






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かなでくん。説明いらないと思いますが、奏くんです。
そして、ろくでもない恋人役をやらせたら右に出る者はいない、大和さん。
奏と大和は電話シーン(奏の台詞しか描いてないけれど)のみでも濃いです。
奏視点の男娼ものなら艶っぽい話になるでしょうね。私以外の人が書けば(*´∀`*)

伊吹は、かなでに惹かれ始めたところ。ほんのり切ないくらいの物語(なはず)。


 
| 小説 | comments(3) | 
Comment








『もう、伊吹くんにしときなよ!』
少女漫画だったら、スタバでお茶しながら友人にそう言われてるはず(笑)
ろくでなし大和さん、いいですね(笑)
パロでもブレない。
ほんのり切ない続きを、お待ちしてます!
from. 恵 | 2015/05/07 22:08 |
やっと読めた!

そして、切ない…。
何が切ないって、奏ちゃんが今のとこ一番切なく感じますよ( ´△`)
大和さんがドS 過ぎて!
奏ちゃんに何させてんのさ!
なぜそうさせられてるのかも楽しみにしてます。

そして伊吹くん。
最初、男娼に似合わない?と思ったけど、
優しいし、一番似合うのかな?と、女性との絡みのシーンで思った。
可愛い子だねぇ。そして優しすぎ。
連帯保証人なんかなっちゃダメでしょ!

ゆっきーと蛍が、似合いすぎてて怖い(笑)
とくに蛍くんね。
派手なスーツが似合いそう~w
怖いのに時々優しいとか。
体売る仕事から逃げたくても逃げ出さない人にしそうだね(笑)
飴とムチだ~。

大和さんが今後どう出てくるか、
それを見て伊吹くんがどう出るか、
楽しみにしてる!!

色っぽいシーンは無いのねー(T-T)
何も最初に宣言しなくてよかったのよ?
書きたくなったらいつでも書いて!!
奏ちゃんメインの話もあるんだよねー??
色っぽい話で!(  ̄▽ ̄)
いつかな~いつかな~??(笑)
from. 葉月 | 2015/06/15 08:14 |
恵>
随分久しぶりになりまして。。。
お返事というのもおこがましいですが、お返事させて下さい。

ホントに!『もう、伊吹くんにしときなよ!』です。
絶対幸せになれるのに。
そして大和は、そうです。パロでもブレません。ろくでなし万歳!
コメントありがとね!!!

葉月>
こちらも本当に遅すぎて土下座。しかしながらお返事させて下さい。

えっと……やっと読めた!というコメントから数か月。
次回続き読んでもらえたとしたら、やっっっっと読めたでしょうか。
本当に不甲斐ない。。。

確かメールでお返事的なやり取りしたと思うけど(記憶が太古)、大和と奏についてはこのお話では全く触れず終わってます。
書くなら大和編で書こうかな、と考えてて。

ゆっきーと蛍が似合い過ぎてヤバイですか(*´艸`*)
パロ思いついたときに真っ先に配役決まった二人ですからね。間違いない。

大和が登場時、伊吹がどう出るか。。。答えは最終話で。
トレンディドラマ(この言葉今でも生きてるの?)的な感じです。
色っぽいシーンなくてすみませ。大和×奏で書くときはがっつりします。ただ、書きたい話多いから、いつになるやらでゴニョゴニョ
コメントありがとう!!!

from. 亜澄 | 2015/08/30 22:02 |
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