* 腐女子向け発言満載 *
妄想咲き乱れる徒然日記。
……ときどきBL小説。
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泡沫
Story of Safari
伊吹片思い男娼パロ。








伊吹が、かなでに俄か告白をした日から、かなでは店に来なくなった。
欠勤理由を由紀也に尋ねれば、「辞める」と一言電話があったきり、連絡がつかなくなった、と返された。
文庫本のページを捲りながら、何でもないように。
実際、連絡も無しに突然辞めていく者の多い業界だ。
人気があればあるだけ、店としては痛手だが、貸しでもない限り、去る者は追わない。

電話番号も知らない。メールアドレスも知らない。住んでいる所も知らない。本名すらわからない。
そうして伊吹は、かなでを失った。失ってみると、改めて思い出される笑顔や、柔らかな声に、涙が零れた。
少しも近づけなかったことが、寂しかった。



「なんだよ、辛気くせえ顔してんな」

由紀也に呼ばれて事務所に入ると、よく知る、けれど久しい顔がそこにあった。
伊吹の目が途端に輝き、声の主に駆け寄る。

「蛍くん、久しぶり。どうしたの暇なの?」
「暇なわけねえだろ馬鹿」

咥え煙草のまま、煙に目を細めた蛍が、伊吹の尻を軽く蹴り上げる。

「痛いっ」
「おまえ頑張ってるらしいじゃん。由紀也が褒めてたぞ。客付き良いって」
「ほんと?」

嬉しくなり、笑顔を由紀也に向けると、心底忌々しげに眉を寄せている。

「褒めてない。事実を言ったまでだ」
「ありがと〜由紀也」
「近寄るな馬鹿」
「なんで俺の周りって口汚い人多いんだろう」
「そんなことより、良い知らせ持って来てやったぜ」
「え、なに?」

伊吹が向き直ると、蛍は煙草を携帯灰皿に押し付けて処分し、見つかったんだよ、と口元を緩めた。
伊吹の脳裏に、かなでの姿が浮かぶ。

「それって」
「おまえの友達」
「え、あ、そっち……そりゃそうか」
「なんだよ。嬉しくねえのかよ」
「あ、いや」
「この俺があらゆる手を尽くして見つけ出してやったんだぜ」

自慢げに笑って、伊吹の肩をばしばしと数回叩く。伊吹は苦笑いを浮かべて、その手を払う。

「これでおまえ、もう肩代わりしなくていいぞ」
「え?」
「本人から残りは毟り取るからさ」
「それって、ここで働かせるってこと?」
「いや、あのルックスじゃ無理だろ。まあ方法はいくらでも」
「酷いことしないであげてっ」

はあ? と、蛍が声を上げる。由紀也も目を丸くして伊吹を凝視する。

「残りも俺頑張るよ、だから」
「おまえ、まさかこの仕事気に入った?」
「気に入ってなんかないよ。けど、友達が酷い目に遭うのは嫌だ」
「あんだけ裏切られといて?」
「仕方ないんだよ。彼の家、両親いなくて、小さい弟の面倒みたりして」
「んなもん嘘だよ」
「へ?」
「両親どころか、じじいも健在の一人っ子。借金はギャンブル依存が原因」
「そう、なんだ……」

俯く伊吹に、天然記念物、と由紀也が呟く。

「だからおまえが気にすることねえんだよ」
「……でも、やっぱり友達だから、俺、助けてあげたい」

顔を上げて訴える伊吹。
蛍は、由紀也と目を合わせて、髪を乱暴に掻くと、荒く息を吐き出した。

「おまえ馬鹿か。てめえのケツくらいてめえで拭かせろ」
「彼の為だけじゃないんだ。信じたら最後まで信じたいの」

だからこれは、俺の問題でもあるんだよ。

「マジかよ。意味わかんねえ。だったらもう好きにしろ」
「ありがとう蛍くん。じゃあ俺、次あるから」

背を向けた伊吹が、ふと立ち止まり、振り返る。
じっと見つめられて、蛍は居心地悪く、なんだよ、と不愛想な声を出した。

「あのね、蛍くんて、人探し得意?」
「まあ、得意っつうか、伝手は多いな。なんだよ。調べてやろうか」
「ほんと? あ、ううん、やっぱいい。じゃ、蛍くんまたね」

手を振り出て行く伊吹を見送った蛍が、マジ天然記念物、と呟く。

「で、その友達とやら、見逃すわけ」

由紀也が文庫本を手に低い声で問う。

「まさか」
「さすが外道」
「おまえだって、あいつの友達とやらにムカついてんだろ」
「興味無い」
「だったらなんで「見逃すのか」なんて聞いたんだよ」
「うるさい。客でもないのに長居するな」
「はいはい」

お邪魔しました、と手をひらひら振り、玄関に向かう。

「内臓でもなんでも売っぱらっちまえよ」

依然低い声で呟く由紀也に、背中で笑いながら、蛍はその場を後にした。







泡沫ァ粉亜砲→



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このお話の由紀也と蛍が、そこはかとなく良い人臭がしてて気持ち悪い(笑)
伊吹をかわいく思っていそうな感じが。
かなでを失った。いぶくん。再会は叶うのか。次で完結です。(後味)ふんわりです。

 
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